団地の入り口から2014/08/12

育ったのは、郊外というには半端に近すぎる、農地から転身したテニスクラブがあちこちにあるような街だった。増築を重ねてがたがたした木造家屋に住んでいた私は、団地に住むともだちのうちに遊びにいくのが好きだった。せまくて急な階段を踊り場で切り返しながらのぼっていく。バタン(ガシャン)としまる金属製のドアにはチェーンロックや覗き窓、新聞受けがついている。四角くてコンパクトな間取りの中に、二段ベッドや小さなお風呂場がおさまっていたりするのにひかれた。建物と建物の間にある公園で遊んだり、草むらの陰に秘密基地のようなものをつくったり…  
30年以上が経っても、団地はそのまま残っている。塩漬けされたようにかわらない風景。この街をつらぬく大きな道路が計画されていて、その事業がいっこうに進まないから地主たちもじっとがまんくらべしているときく。ぱっとみると同じだけれど、柱や壁の奥の芯のあたりがじわりじわりと劣化してきているにちがいない。私の体も。ともだちの行方は知らない。

コメント

_ takako ― 2014/08/15 03:45

そうそう!そーだったなぁ~と、
思いながら
わたくしも当時を思い出しました!
うちも木造住宅で玄関の戸はがらがらと開ける
木製の格子戸。
友達んちは、がしっと頑丈な四角い金属製
おまけにすごいチェーンも付いてて、
もちろんポストも。
極めつけは、小さなまぁあるいのぞき穴
こんな堅牢なドアのある家は
悪い人なんか絶対に入って来んだろうなぁ~と
子供心に思っておりました。(^_^;

_ nao ― 2014/08/15 21:09

takakoさま

確かに子どもにとって玄関は「悪い人」から身を守るための
砦のような気がしていましたね。破られたらどうしよう という…

古い家の窓は鍵がねじをひねるタイプだったり
ガタガタいって隙間風が入ってきたりして 団地の
「アルミサッシ」にくらべて何となく信用にかける感じでした。

今、箱の中に住んでいると、お庭のある年を経た住宅がうらやましいです。

暑い日が続きますね。ご自愛ください。

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